次の文章を読んで 、 あとの間いに答えなさい。 (100 点満点 ) 1 教養ということばについて 、 従来から一つの誤解が広く行われているように私には思われる。というのに 、 雑誌や書物 、 ないしは講演などで 、 いわゆる教養講座といわれているものを見ると 、 そのほとんどが 、 多種多様な知識の 、 しかもその断片の紹介に終始しているよにみえているからである。そうして世間でも 、 いろんなことを雑然と心得ていて 、 どんな話題にでも口の出せるひとを 、 教養の高い人と簡単に決めてしまっている。教養と知識とは決して同じものではないのである。というよに 、 『知識はそのままでは決して教養にはならないのである。いくら絵かきの名前をたくさんに知っていても 、 美に対する感覚がちっともみがかれていないような人は 、 美術の教養のある人ということができない。作家や作品に広く通じていても 、 人間の感情生活や人生の諸問題に粗雑な考察しかめぐらすことができないような人間には 、 文学は少しも教養とはなっていないのである』 2 もちろん教養には知識や学問が必要である。いかに耳の感察の鋭敏な人でも 、 ベートーベンもシヨパンも聴いたことのないとうな人を音楽の教養のある人ということはできない。教養としての知識とは 、 その人の人格を内部からしっかりと支えているような知識を指すんであり 、 知識が人格と没交渉な状態にある場合には 、 真の教養は決して生まれることができない。 3 次に注意しておきたいことは 、 教養を身につけるということは知的貴族になることでは決してないということがある。例えば美術の鑑賞眼を養うことによって 、 普通の人々の感じ得ない深さにまで絵画や彫刻の美しさを感じ得た場合 、 自分が一般の人々よりは一段と高尚な人間になったような誇りを抱くことはありがちなことであるとしても 、 そのために教養を深めようとするのであるとすれば 、 その人はついに真の教養を身につけることは不可能であろう。