青春時代、文学を語ったボーイフレンドから再会したいとの電話があった。私は慌てた。何しろ半世紀以上[1]。女は老けやすい。初恋の相手ではないが迷う。思い切って会えば、同時代を生きてきたか話題は極めて豊富である。再会することによって、嫌われたり嫌われたっていい。2 聞き直って [注1]最寄りの駅で会うことにした。おしゃれをすると薄着になり風邪を引くのでズボンは離さず、ジャンバーだけコートに変えた。 約束した時刻、駅の改札口で待つことしばし。果たしてお互いの顔のみわけが付くだろうか。向こうでもそんな気持ちでいるに違いない。分からなかったらどうでしょう。仕方がない、運を天に任せようと思って時計の針を見上げていると、電車がついてどっと乗客がおりてきた。 テレパシー [注2]といおうか、それらしい人がじっとこちらへ視線を注いで近付く。3 私はちょっと耳の所まで手を挙げた 。近付いてくる人の視線がたちまちこれに答えた。 答えた笑顔の中に半世紀の面影が浮かんだ。 [注1] 聞き直る:(辞書的な意味)急に態度を変えて、厳しい様子を見せる。 [注2] テレパシー:(辞書的な意味)遠く離れいる人同士の気持ちや考えていることが、一種の心霊現象で分かること。 76.[1]に入る一番適当な言葉はどれか。
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