転職を考えることがときどきある。とはいっても、1(それほど本気ではない)。ただ、もし別の仕事を選んでいたら、自分はどんな人生だったのかを想像してしまう。想像するだけでもけっこう楽しい。いまの仕事に大きな不満はないが、そうかといって格別面白いというわけでもない。もしこの仕事をしてみたら、自分はもっと充実するのかも、とついつい考えてしまうのだ。 まあ、隣の芝生はよく見えると言われてしまえばそれまでだが、自分にピッタリの洋服がなかなかないように、(注1)誰しも自分だけの仕事を探しているのだろう。洋服は試着できるが、仕事に関しては、試しにちょっと、というわけにはいかない。もっとも多少働いたとしても、仕事の本質はわからないだろうが。 昔に比べれば、われわれの職業選択の幅ははるかに拡がっている。だけど......これが2(自分の仕事)だと(注2)胸を張って言える人は意外と少ないのではないだろうか。 才能があれば、と思う人がいるかもしれない。子供の頃に憧れていた野球選手とか、大学時代に憧れた映画監督になっていたら、たしかに楽しいだろう。でも、現在、私が思うのは、そんな憧れの世界ではない。たとえ平凡な才能でも、自分にピッタリの仕事を探せればよいと思っている。誰しも、自由な職業選択における自分だけの(注3)“必然”を求めているのではないだろうか。 (梅崎修『マンガに教わる仕事学』による) (注1)誰しも:誰でも (注2)胸を張って:自信を持って (注3)必然:そうなって当然のこと 66.「1それほど本気ではない」理由として、本文から考えられることはどれか。
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